ボンバ菓子が消えた謎:懐かしの駄菓子はなぜ姿を消したのか

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忘れられない味って、あるよね。誰にでもあると思う。

僕にとっては、それがマドリードで食べた、最初の「ボンバ」だった。ボンバっていうのは、スペインのタパスの一種なんだけど…。

今でも、Googleマップを開けば、マドリードのどの通りのどの辺りだったか、指で示せるくらい。その時の光景が、頭の中で3D映像みたいに再生されるんだ。VRゴーグルなんていらない。それくらい鮮明に覚えてる。

不思議なもので、その店の名前も、正確な場所も、もう思い出せない。まるで夢の中の出来事みたいに、二度とたどり着けない場所になってしまった。うん、本当に。

そもそものはじまり:消えたボンバの謎

あれは確か、2010年のこと。マドリードで、パートナーの家族と偶然みんな集まることになって。すごい偶然だよね。「まさか全員ここにいるなんて!」って感じで、街に繰り出して、一日中タパスのハシゴをしたんだ。

夕方ごろかな、僕たちはタパスの聖地みたいな場所にたどり着いた。マヨール広場のすぐ下にある「カバ・バハ通り [Calle Cava Bajas]」。長さ300メートルくらいの通りに、50軒ものタパスバルやレストランがひしめき合ってる。日本のガイドブックなんかでも「タパス天国」って紹介されてる、あの通り。

当然、通りは人でごった返してた。僕たちはなんとか隙間を見つけて、ある一軒のバルに入った。木の板で壁も天井も覆われてて、まるで大きな木箱の中にいるみたいな、ちょっと変わった内装だったな…。

そこのカウンターのガラスケースに、ずらーっと並んでたのが、ボンバだったんだ。メニューは、これだけ。メニューが一品しかない店って、それだけ自信がある証拠だから、いいサインなんだよね。✨

一口食べて、僕とパートナーは顔を見合わせた。口がいっぱいで喋れないから、フォークで相手を指しながら、うんうんって頷き合う、あれ。言葉にしなくてもわかった。「いつか自分たちの店を持ったら、絶対にこれをメニューに入れよう」って。

マドリードの夕暮れ、活気あふれるカバ・バハ通り
マドリードの夕暮れ、活気あふれるカバ・バハ通り

…でも、話はここで終わらない。その数年後、僕たちは再びマドリードを訪れた。もちろん、あのボンバの味をもう一度確かめるために。

でも、見つからなかったんだ。カバ・バハ通りを何度も、何度も往復して。一軒一軒、店のドアを開けては中を覗き込んで。でも、あの木箱みたいな内装の店も、ガラスケースに並んだボンバも、どこにもなかった。

だんだん不安になってくる。「あれは本当にカバ・バハ通りだったのか?」「そもそも、あの店は実在したんだろうか?」って。一緒にいた家族に連絡しても、みんな「ボンバを食べたことは覚えてるけど、店の名前は…」って感じで。結局、あの日のあのボンバは、時の砂の中に消えちゃったんだよね。

うちの店のボンバ:思い出の味を再現するまで

あの幻のボンバが忘れられなくて、僕たちはアメリカで開いた自分たちのスペイン料理店で、ボンバを看板メニューにした。

うちの店のボンバは、巨大な豚肉のミートボールを、ユーコンゴールドっていう品種のジャガイモで作ったマッシュポテトで包んで、パン粉をつけてオーブンで焼いたもの。それを「カズエラ」っていうスペインの伝統的な土鍋に入れて、ローストした赤ピーマンのソースを添えて出すんだ。

これがもう、大人気で。正直、「肉とジャガイモ」の組み合わせって、アメリカ中西部の人たちにとっては猫にマタタビみたいなものだからね。笑

キッチンでは、冗談みたいにボンバを転がしてた。「暇があったら掃除しろ」じゃなくて、「暇があったらボンバを転がせ」が合言葉。キッチンスタッフにとっては、ボンバ作りは通過儀礼みたいなものだったな。

キッチンでのボンバ作り。一つ一つ手作業で丁寧に。
キッチンでのボンバ作り。一つ一つ手作業で丁寧に。

どうやって作るの?ちょっとだけ秘密を公開

うちの店のボンバのレシピは、3年くらいかけて今の形になった。いろんなキッチンの知恵や秘密が混ざり合ってる。面白いのは、ブレークスルーが意外なところから来たこと。

  1. おばあちゃんの知恵:最初のシェフのおばあちゃんのアイデアなんだけど、ベーコンを焼いた時に出る脂を取っておいて、マッシュポテトに混ぜるんだ。これが、塩気とスモーキーな風味を加えてくれて、味に深みが出る。しかも、ボンバ同士がくっつくのを防ぐっていう、思わぬ効果もあった。🙏

  2. イタリアンの裏技:昔、ラスベガスのイタリアンレストランで働いてた時、そこのシェフはイタリア人しか信用してなくて。なのに、ミートボールのつなぎに、なんとリッツクラッカーを砕いたものを使ってたんだ。邪道に見えるけど…美味しくなるなら、それでいいよね?この技も、ありがたく拝借した。

だから、うちのボンバはグルテンフリーにはできなかった。中身にリッツがぎっしり詰まってるからね!

ボンバ比較:幻 vs うちの店 vs スペインの平均

「スペインには他にもボンバはあるの?」ってよく聞かれる。もちろん、ある。でも、僕がマドリードで最初に出会ったあのボンバと、僕らが店で作っていたボンバ、そしてスペインで一般的に見かけるボンバは、ちょっとずつ違うんだよね。個人的な印象だけど、まとめてみた。

比較ポイント 幻のボンバ (マドリード) うちの店のボンバ (アメリカ) スペインでよく見るボンバ
サイズ感 ソフトボール級?記憶の中で巨大化してるかも…。とにかくデカかった。 これも結構大きい。握りこぶし大くらい。満足感あるサイズ。 もっと小さい。テニスボールか、それ以下かな。上品な感じ。
中身の比率 肉が主役。しっかりしたミートボールがドン、と入ってたはず。 肉とジャガイモのバランス型。でも肉の存在感はしっかり。 ジャガイモが主役。ひき肉が少し入ってる、って感じのことが多いかも。
隠し味とか 不明。でもシンプルで力強い味だった。これぞ!って感じ。 ベーコンの脂とリッツクラッカー。これがサクサク感とコクの秘密。 店によるんだろうな。でも基本はシンプルだと思う。
店の位置づけ メニューはこれ一択。店の魂、みたいな存在感。潔い。 店の看板メニュー。シグネチャーディッシュってやつだね。 数あるタパスの中の一つ。選択肢の一つって感じかな。

正直に言うと、あの最初のボンバ以降、スペインで食べたボンバは、どれも少し物足りなく感じてしまう。たぶん、僕の頭の中で最初の記憶が美化されすぎてるんだろうな。初恋みたいなものかもしれない。🤔

完成したボンバ。カズエラに盛られて、ソースと共に。
完成したボンバ。カズエラに盛られて、ソースと共に。

結局、最高のボンバはどこにあるのか

レストランをやっていると、「スペインに行くから、美味しいボンバが食べられる店を教えて」って聞かれることが時々あった。

「もちろん、ありますよ!」って答えるんだけど、続けて「どこかおすすめは?」と聞かれると、いつも言葉に詰まる。

「それが…力になれたら嬉しいんだけど…」としか言えないんだ。

僕自身が、いまだにあの幻のボンバを探し続けているから。カバ・バハ通りを歩くたびに、少し切ない気持ちになる。でも、いつかまた、あの木箱みたいな店に、ふらっとたどり着けるんじゃないかって、どこかで期待してる自分もいる。

みんなにも、忘れられない「あの店のあの味」ってありますか?もしあったら、それがどんな物語なのか、コメントで教えてほしいな。

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